なぜビジャレアルに悲劇が起きたのか
ラリーガ第3節アトレティコマドリーvsビジャレアルでそれが起きた。
後半アディショナルタイム、スコアは1-2でビジャレアルがリードする展開。
残り30秒、ビジャレアルGKのルジがゴールキックを蹴る。それを拾ったのはサウール。サウールは早くもロングボールをゴール前に蹴り込むが、効果的ではないボールとなってしまう。
時間を使う為にもDFアイッサ・マンディはGKにヘディングでボールを送る。
しかし、ルジはロングボールを自ら処理しようとゴールマウスから少し離れていた。
無常にもそのヘディングしたボールはオウンゴールという形でワンダ・メトロポリターノを熱狂の渦へと導いてしまった。
今季初勝利、エメリ監督は対アトレティコ初勝利目前での悲劇的なドロー決着。
もちろん、マンディとルジ、周囲のコミュニケーションの問題で、防げる失点であった事は間違いない。しかしそれで終わらせず、なぜこの悲劇という形になったのか考えたい。
1.勝ち点を落としたのはアトレティコ
悲劇の話の前に、試合について。
アディショナルタイム、しかもあのような形でのオウンゴール。
それだけ切り取ればビジャレアルは勝ち点2を「落とした」、アトレティコは勝ち点1を「拾った」と見えるが、試合の内容を見ればアトレティコは勝つべき試合であった。
試合は終始アトレティコペースで進んでいた。
アトレティコは攻守のトランジションが異常に早く、即時奪回が徹底されていた。
ビジャレアルはカウンター狙いであっただろうが、ボールホルダーにはすぐプレッシャーが入り、その間に後ろのラインは全て綺麗に揃っている。
このアトレティコの帰陣はもはや芸術である。
かたやビジャレアルの守備は、ファーストディフェンスでコースを限定してもそれを活かせないシーンが多々あった。
75分にジェラール・モレノが中を切りコースを限定して、さらにマークについても指示を出していたシーンがあった。
しかしいとも簡単にそこに通されて突破されたのである。
ジェラール・モレノは明らかな怒りを正直に表現していた。
その他にもボランチ間に受けにくるアトレティコの選手を全く捕まえ切れず、受け放題、ノープレッシャーで前を向かせるシーンが試合中ずっと見られた。
確かに現在のアトレティコの5-3-2の超可変型フォーメーションは捕まえづらいとは思うが、あそこまで好き放題させるのはいくらなんでも無防備というか、守備戦術の浸透度を疑ってしまう。
スタッツを見ても圧倒的である。とてもスタッツからは2-2の結果を想像できない。
そんな内容であった事から、アトレティコは勝ち点2を「落とした」、ビジャレアルは勝ち点1を「拾った」というのが試合を通して見た感想である。
2.両チームの得点の形
最近のリーガにしては点が入った方の部類に入る試合であったが、果たしてそのゴールの内容はどうだったのか。
まずビジャレアルの先制点。
右サイドで受けたビジャレアルMFジェレミー・ピノの個人技でレマルとエルモソの2人を突破。この2人はこの試合かなり良いプレーを見せていたが、ここの2人の対応は少々問題があったとは思う。
ぽっかり空いた二列目のスペースにボールを送ると走り込んできたトリゲロスが見事なシュートをゴールに突き刺した。
アトレティコはこのスペースが空きがちである事は一つのウィークポイントではあると思う。
自陣深くでのスローインとなったビジャレアル。そこを狙い澄ましたようなハイプレスでジョレンテが奪い切る。
そのまま中のアンヘル・コレアに繋ぎ、エリアで待つスアレスへお膳立て。
それをしっかりスアレスは決め切って見せた。
アトレティコの守備意識が生んだゴールだった。
勝ち越しゴールを奪ったのはビジャレアルFWダンジュマ。
明らかにアトレティコCBヒメネスとサヴィッチのミスではある。
ボール処理を誤ったヒメネス、
決め切ったダンジュマも素晴らしいが、防げる失点をしてしまった。
そして先述の通りの同点ゴールである。
3.なぜビジャレアルに悲劇が起きたのか
まず悲劇になった原因は既に述べているが、もちろん当人たちのコミュニケーション不足、周囲のコーチング不足であるという事は否めない。
しかし、悲劇を演出したのはそのシーンが象徴的というだけで、試合全体がそこに向かっていたのではと思う。
決めきれないアトレティコ。
前半アディショナルタイム、アトレティコの完璧な崩しでレマルからのクロスをトリッピアーがヘディングシュート。
しかしこれはゴールカバーに入ったマンディが止めている。
後半開始から間もないタイミングでコレアの華麗な突破からのシュートもあったが、それをシュートブロックしたのもマンディ。
決められるというピンチはいくらでもあった。
しかしビジャレアルはことごとく抑え、アトレティコはことごとく外した。
結論を言うと、サッカーのせいだと感じる。
内容的に勝ってもおかしくないアトレティコが自ら苦しみ、最後に甘い褒美が待っていたのに対し、
試合を通して苦しみながら少ないチャンスを物にし、愚直に戦ってきたビジャレアルに最後に悲劇が待っていた。
サッカーは理不尽なスポーツ。
そんな悪魔の部分が姿を表した試合であった。
戦術的に上回っていたアトレティコに、ビジャレアルは後半戦でどんな戦いを見せるのか。
恐らく、ビジャレアルにとって勝てない相手というイメージが強くなったというよりも次こそは必ずという意気込みの方が強いはず。
今からこの2チームの再戦が楽しみで仕方がない。